漆黒の機体は肉眼ではもう捕捉できない。しかし僕は視線をレーダーに落とすことはできなかった。虚空に吸い込まれていった機影を求めて、ひたすら目を凝らす。せめてあの光の粒子が放たれれば捉えることもできるだろうに、この空域には肉眼で確認できるほどの粒子は散布されておらず、ビームサーベルのために温存されている彼のドライブもまだ稼働してはいない。
 グラハムは征った。吸い込まれたらもう二度と戻れないであろう真っ暗な場所に。そして彼はきっと帰りたいとは思っていない。グラハムが試運転もそこそこに完成したばかりのGNフラッグで出撃する前から、僕にはわかっていた。データの蓄積とそれによる技術の進歩など、もはや彼には用がないのだ。軽量化を図ろうかと持ちかけた時、通常のレコーダーのみならずブラックボックスすら取り外そうとした彼には、生きて帰るつもりどころか自身の死後にすら頓着ないことが明白だった。




「君も大概、頑固だな」
 呆れた声は妥協を表しているが、同時に彼が自分の器量を誇示することをも示している。これがなかったら誰がエイフマン教授と僕の功績を証明するんだい?―――先にエゴ(できるだけ俗なものが良い)を剥き出しに見せてやれば、僕より遥かに頑迷な彼が折れることを僕は知っていた。規定通りにブラックボックスを搭載したGNフラッグは、果たして僕の勝利なのだろうか。僕は少しも嬉しくないが。
「フラッグは、そんなに理想的な棺桶なのかい?」
 それはいよいよフラッグと共に宇宙に上がる前夜のことだった。戦況に応じて柔軟に対応するという前提で、彼が出撃を命じられた(命じさせた、というのがあるいは正しいかも知れない)期日の、二日前の夜だった。彼に肉体的な負担を課す僕らの関係において、これが最後だと思われる夜でもある。それだけに貪欲なセックスだった。
 どうせ脱ぐのだからと羽織っただけのバスローブは彼の腕の一薙ぎで払われ、唇に噛みつかれたと思ったら舌がねじ込まれる。僕の方は連日の突貫作業で性感が鈍っているのか、脳が更なる疲労を拒否しているのか、あまり快感を得ていなかった。冷静な頭でグラハムの肩(彼はさっさと服を脱ぎ捨てていたので、裸の)をベッドに押し込む。すかさずがきりと彼の両脚が腰に組みつき、臍の辺りをグラハムの高ぶりが突いた。人の身体とは不思議なもので、麻痺していたはずの僕の下半身もその頃には理性を置いてけぼりにしてグラハムに答えている。だから僕の内でくすぶっているグラハムへの苛立ちに、セックスに夢中になっていた彼が気づくことはなかった。
 いつもなら趣向を凝らす前戯もおざなりに、グラハムはさっさと自分で解したそこに僕を押し込む。興奮した動物そのままの息遣いがざらざらと耳に纏わりついて不快だと思いたかった。局所さえ除けば僕の身体はこれから彼が向かう真空の宇宙と同じくらい冷ややかで、グラハムが触れたところが火のついたように熱く、灼かれているのだと感じる。振り払ってしまいたいような気もしたし、そのまま熱を取り込んで飲み込んでしまいたいとも思った。
 矛盾を抱えながら、僕は彼の肩甲骨の辺りに整備用のオイルの染み込んだ爪を立て、大腿部の筋肉とベッドのスプリングを駆使して二人分の身体を揺さぶる。長く伸びた僕の髪を彼が掴み、手綱のように振り回しては僕を自分好みに操ろうとするグラハムの意志に反するにはどうしたらいいのだろうと思いながら、僕は彼の胸に思い切り歯を立て背中を掻きむしり、捻じ込んだ身体の一部でさらに深く彼を抉った。


 お互い激しく振れる腰や高まる熱とは裏腹に、なかなか到達点を見出せずにいるうんざりするような行為の中、僕は先刻の言葉を口にした。息切れしていたし理性で口に出したことでもないのだが、僕はどこか冷静だ。ああ、言ってしまったなぁ。そんな風に呟く自分も脳裏にいた。
「何?」
 彼にしてはあまりに平凡な切り返しだ。僕なりにずっと葛藤してきた鬱屈を、勢いとは言え口にしたのだからもう少し面白いリアクションをくれても良いじゃないかと思う。そして心中で多弁になっているのは、やはり僕は僕なりに動揺しているということも意味していた。
 グラハムの言葉は平凡で、その瞳の緑は潤んで淀んで焦点が合ってはいない。彼がセックスに夢中なのか、夢中になっている他の何かを忘れるために意識を埋没させているのかは僕の知るところではないが、彼の意識が覚醒したら食い千切られるかも知れないなと彼の身体に収まったままの自身を思った。
「言った、ままの意味だよ」
 成人男性の体重を乗せたまま動くのはいい加減億劫だったので、グラハムの肘の内側の柔らかな場所に親指を埋め込むように強く強く腕を掴み、上に跨るグラハムの身体を揺さぶる。背が大きくしなり、湿気を含んでいつも以上に跳ねまわる髪から汗が飛び散った。同時に無様な嬌声も部屋中に撒き散らされる。基地を移転した先での仮の宿舎は壁が薄いが、気にする必要はなかった。隣室の住人はグラハムより遥か先に宇宙に飛び立ち、グラハムはそれ故に焦れて腰を振っているのだ。この宿舎で共に暮らした仲間は、皆グラハムを置いて行ってしまった。いずれその内の何人かは、永遠にグラハムが追いつけない場所へ逝ってしまうだろう。
「ふ、ぁあ、あああ……っ!」
 髪と汗と、先端からほとばしる精液を振り乱して翻弄されていたグラハムが、不意に嬌声を噛み殺し、前立腺を刺激される快感を、あたかも苦痛であるかのようにやり過ごし始めた。腰の横でグラハムの爪先がシーツを噛む。その大腿部の筋肉が隆起し、僕が煽ったままに深く繋がった腰を浮かせて、彼の急所から僕を外させた。グラハムはそこで生じた余裕を以って僕の肩を掴み、力任せに押し倒す。もともと彼の方が圧倒的に有利な体位だったので、抗う術もなく僕は少し位置のずれた枕に頭を預けた。
「やっぱり敵わないなぁ」
「注意力が散漫だ、君は」
 降参、とばかりに両の手のひらを彼に向けて振ってみせる。彼に負かされることに慣れ切った僕は、さして痛痒を感じないが、どうやら彼の方はそうはいかないらしく、上下に荒々しく揺れる肩の間で、先程まで情動でぐずぐずに茹だっていた瞳が、今は鋭さと深みをもって僕を貫いていた。それは恐らく、僕が浴びた彼からの初めての敵意だ。彼が淘汰してきた数え切れないほどの者たちが死の直前に浴びたであろうそれが、なぜか今の僕には酷く心地良い。僕の言葉が、彼が欺瞞によって覆い隠してきたものを暴いたことが嬉しかった。それは僕が長いこと、彼とこんな関係になってからずっと壊してみたいものだった。ある種のカタルシスが僕を襲い、その快感は優越感を僕にもたらして、肉体的な不利を感じさせはしない。
「僕が集中して、君に奉仕してあげれば、君は満足するわけかい?」
「不快な表現だ。君こそ何が不満なんだ」
 彼が身を乗り出して俯くと、形の良い鼻先から汗が滴り僕の頬で弾けた。急に冷めた身体は五感を取り戻し、汗と精液の酷い臭いを知覚する。
「強いて言うなら全てが不満だね」
 グラハムが訝る前に、彼の体重で痺れかけた足を無理やり跳ね上げ、膝を立てる。これで踏ん張りが利くので、下からでも多少は彼に対して干渉しやすい。彼の咽喉がのけぞり、露わになった白い喉仏が無造作に目の前に晒された。
「僕はね、グラハム。君のことなんか何でも知っているんだ。君や、あるいは僕が思っている以上に僕は君のことを知っているんだよ、グラハム・エーカー」
 再び深く繋がった部分を、幾度も突いて翻弄して、彼の身体に自分の痕跡を刻みつけたい衝動に駆られる。けれども駄目だ。それでは彼の思惑に乗ってしまう。焦慮を忘れさせてなんてやらない。何も聞こえなくなるような状況には置いてやらない。グラハムはその持てる全てで僕の言葉を聞いて、脳裏に刻みつけるべきだった。せめて今、この瞬間くらいは。
 衝動のままに腰を動かそうとするグラハムを拘束したかったが、跨られている状況では如何ともしがたく、僕は仕方なしに彼の腕を強く引いた。ここ数週間酷使し続けた腕が悲鳴を上げるし、急に体勢が変わった所為で僕もグラハムも先端から耐えきれなかった情欲を僅かに零す。倒れこんできたグラハムの身体を抱きしめながら、痰を吐くような小さな吐精を罰悪く感じずにはいられなかった。
 不自然に屈んだ彼の腰に腕を回し、完全に拘束する。抱きしめあうような、まるで恋人同士がするような甘い仕草だと思った。そして同時にそれが今の自分たちには似つかわしくないのも承知していた。ねっとりと下腹部を圧迫するグラハムの下肢だけが素直に自己主張を続けている。
「知っているんだよ、僕は。フラッグに乗っている間の脈拍も呼吸数も、操縦桿の握り方の所為で利き手の薬指にタコがあることも、好きなビールの銘柄も女性との無茶な付き合い方も、とても巧みなキスの仕方も動物みたいに乱雑なセックスも、君のことなら全部、全部ね。今となっては君のご母堂より君に詳しい自信が、僕にはあるんだ。残念ながら」
 かのグラハム・エーカーが声を失っている。腕の中、そう、奇妙なことに彼は今僕の腕の中にいて、こんな密着した姿勢は珍しかったし、僕が彼に対して所有権や影響力を主張するようなことは、これまで皆無だったと言っていい。
 そこでもがくグラハムを、抱きしめることで拘束し続ける。単純な腕力だけでは簡単に振りほどかれるので、立てた膝を軸に腰を揺らし、彼を性的な快感で呆けさせて抵抗を緩めさせた。かといって激しい動きなどできるはずもなく、焦らして融かすような生半可な摩擦に、彼は咽喉を震わせて、より強烈な刺激を求めて腰を振る。弛緩した指先が僕の胸を引っ掻いたが、力が込められるはずもなく、さして痛みも感じなかった。
「ああ、あっ、ふ……、」
「だから君が何を望んでいるのかも、もしかしたら君以上に把握できてしまっているんだ。雪辱を果たしたその後にさ。ねえ、聞いてる? グラハム?」
 いい加減、成人男性二人分の体重を支える膝ががくがく震えて泣き笑いを始めたので、グラハムも大人しくなったこともあり、僕は膝から力を抜いた。くたりと湿ったシーツが膝裏に貼りつくのを感じ、強張っていたグラハムの身体も弛緩して、紅潮した頬がぺたりと僕の胸にもたれる。快楽を共有したことはあっても、こうして一方的に甘えた仕草をされるのは初めてだった。もっとも、僕がこうもグラハムとのセックスに懸命になることも珍しいのだが。
「……勝手にしてくれる、」
「勝手にもするさ。それこそ君が勝手ばかりなんだから」
 ぜいぜいと肺が引きつったような呼吸の合間に、彼がようやくまともな言葉を紡いだ。僕はそれを待ち望んでいたような気もするし、ずっと口を噤んでいて喘いでいてくれればいいのにとも思った。どうせ彼の言葉は僕のそれを無視して傲慢に紡がれる。だから僕も勝手にすることにした。彼が感じているであろう、暴かれる不快感や閉塞感など知ったことではない。
「でも、簡単には死ねないよ? 君が駆るのは他の何でもない、フラッグなんだ」
 身体を起こそうとするグラハムの、汗まみれの背中に再び腕を回す。もう足に力は要らなかったので、ひたすら腕に力を込めた。ぬるりと滑る皮膚に爪を立てる。上下するグラハムの肩越しに見えた白い背中には、先ほどつけたのだろう、既に真っ赤な爪痕が生々しく残っていた。密着した腹に張り詰めたグラハム自身が押し込まれ、彼に押し込んだ物はさらに深く進む。
 そこまでされても、グラハムは決して繋がった身体を引き剥がそうとはしなかった。咽喉の奥で声を噛み殺しながら、僕の鎖骨を折らんばかりに掴みながら、深くなる結合から逃れようとはせずに貪欲に僕を飲み込もうとする。引いたら負けとでも思っているのか、夢中になれれば何でもいいのか。
 自分で始めたこととはいえ、それも腹立たしくて、もう痺れ切っている足を無理やり動かし、衝動のままに彼を揺さぶり、自分を押し進めた。中で潰れそうな圧力を感じながらも、淫猥に収縮して搾取される感触に、視界が明滅する。
「グラハムっ……!」
 なりを潜めていた射精感が急激に込み上げ、彼の背中に回していた腕に力を込めた。分厚い筋肉越しに彼の骨を感じ、こちらの脆弱なそれが軋む音がしたが、構わず抱きしめる。かつてないほどに強くだ。足を彼のそれに絡めてがちがちに拘束してやりたかったけれど、痺れたまま言うことを聞いてくれない。わずかに持ち上がってはグラハムの汗で濡れた肌を滑るだけだ。その分も込めて、より強く抱きしめる。
「グラハム、グラハムっ」
 腕の中にある身体を下に押し込むようにすると、グラハムの身体の中に自分がより深く入ったことがわかった。そしてその瞬間には、灼けつくような衝動が、身体の中心を抜けて遠くに走り抜けていくのを感じる。固く張り詰めて、二人の腹に散々挟まれ圧迫されていたグラハムのそれも、まっすぐに延びて解放に身を震わせた。顔を仰け反り、呼吸器をまっすぐに伸ばすようにして息苦しさを逃していると、晒していた顎に飛沫が飛び散った。




 抑圧され続けた情動の解放は、だが状況の異常さを隠蔽してくれる、濃厚な空気が霧散した瞬間でもあった。本能と理性のせめぎ合いの只中に、つい先刻まで本能だけでコミュニケーションを取っていた僕は放り出され、本当に、本当に罰の悪い思いを味わわざるを得なかった。だが幸いにも連日の突貫作業に伴って繰り返された試験飛行で、彼自身も疲労していた。そこに重ねた行為のせいで、流石の彼もそのまま寝入ってしまったようだ。眠りは深く、起きた様子を見せない。
「僕はMSを作ったのであって、棺桶を作ったわけじゃないんだ」
 背を向けて、まるで拗ねた子供のような仕草で眠り続けるグラハムに僕はそう呟く。戯れと手慰みに、枕に埋もれたブロンドに触れてみると、それは滑らかそうな見た目とは裏腹に汗だくで、べったりと指に絡んだ。まだ濃く鼻先を漂う体臭と相俟って不快だったが、何となく手を放さないまま撫でてみる。
「だってフラッグなんだよ。教授が作り上げて、僕の手で改修したフラッグなんだ」
 後味の悪さと後悔の念が、事後の気だるさと混じって、こんな吐露を僕にさせた。最中に突きつけたのと同じ言葉だったが、心境はまるで違う。何年振りか泣きそうになり、慌てて空いた手で目元を押さえた。教授やオーバーフラッグスの隊員たちの死でも、悲しみよりも悼みが先にきて泣こうとはしなかったのに、今は無性に涙腺が緩む。嗚咽というには勢いがなく、ただ眼球を覆う水の膜が瞼を越えて頬に流れた。
「知っている」
 眠っていたはずのグラハムが、僕の掌の下から声を発しても、僕は特に驚かなかった。今更取り繕うとは思わないし、思っていたとしても無駄だからだ。
「何を知っているんだい?」
 不思議と涙はぴたりと止んだ。頬に残ったそれだけを乱暴に指で掬ってシーツになすりつけ、僕は問う。
「私はエイフマン教授とカタギリが自ら改造を施した、最強のフラッグに乗っているということをだ」
「ああ、ああ、そうだよ。そうだね」
 凡庸な言葉で応じながら、僕は彼が彼なりに気を遣って言葉を選んでいることを理解していた。自らの力を誇示するためでも、他者を高揚させるためでもない。グラハムにしては珍しく、僕自身に向けられた言葉だったが、それはどこかで僕を寂しくさせた。それが僕にまた余計な言葉を口走らせる。
「君が勝って、生きて帰らなければ、教授と僕の能力を世界に知らしめることができないんだよ」
「無論、熟知している」
 迷いなく答える言葉は力強い。けれども背を向けて、子どものように頭を撫で続ける僕の手を甘受するという、グラハムらしからぬグラハムだった。
「うん、君は知っている。でも、知っているだけなんだよね」
 答えはない。僕も期待してはいない。ただ、アラームが起床の時間を告げるまで、僕は彼のべたついた髪を撫で続けたし、彼もそれを受け続けていた。





 彼が待ち望んでいた出撃命令が下された。それは皮肉にも、凶報を伴ってやってきた。先発していたGN-X部隊の損害、即ち戦死者の情報。グラハムはまた置いていかれてしまったのだ。追いつこうとした正にこの時。
 輸送艦から格納庫のフラッグへと足を向ける彼に、ここが輸送艦の艦橋だということを差し引いても、例えばキスや抱擁の類を期待したわけではない。だが、あの夜僕が撫でつづけた金髪が無機質なヘルメットに覆われ、そのまま決して振り返ることなく、何一つ言葉を放つこともなくドアへと向かう彼に対して、僕がまたそれなりの不満と淋しさを覚えたのは確かだ。
「行ってくるといいよ、グラハム。思う存分」
 僕の言葉に、淀みなく動いていた足がドアの前でぴたりと止まる。センサーが察してドアがスライドしたが、彼はその先に進もうとはしなかった。戦闘を前にした彼に水を差したかと、少し焦る。何も期待をするまいと決めたのに、こうして声をかけてしまったことを少なからず後悔した。立ち止っていないで、さっさと行けばいいのだ。ここは彼のために手配した、ユニオン最新鋭の宇宙輸送艦の中で、格納庫では彼のフラッグが彼を待っている。
「言われずとも」
 僕はこの時、彼の返答を期待したわけでは断じてない。まして、帰還を約束することなど。案の定、彼はただそれだけの言葉を、けれども長い時間をかけて肩越しに僕に投げてみせてから去って行った。ドアの開閉時に響く、エアの抜ける音の軽さが何だか不条理だ。
 メカニックやオペレーターたち、グラハムの無茶に付き合ってくれた多くのスタッフが、彼に声援を送り、グラハムもそれに応えながらへ格納庫へ向かう。艦内放送がGNフラッグの出撃を告げ、艦橋ではオペレーターたちが発進シークエンスを開始した。
「それでもやっぱり、帰ってきてほしいんだよ。僕は」
 流れるような手順。戦争映画のワンシーンのようだ。その流れを全て従えて、グラハムは虚空へ消えた。その中で、僕の無意味な呟きだけが歪に真空の闇にこびりついた。